ロールプレイング・ワークショップ | 愛の大学院

ロールプレイング・ワークショップ

このセッションは、知識を「知っている」から「できる」へと変えるための、極めて重要な実践の時間です。安全で尊重に満ちた環境の中で、受講者が安心して失敗し、学べるような構成を心がけます。


心に触れる対話の実践

講師より:「皆さん、ようこそ。これまでの座学で、我々はコミュニケーションの重要性を学んできました。しかし、車の運転と同じで、知識だけでは路上には出られません。今日は、実際にハンドルを握り、アクセルとブレーキの感覚を掴むための、実践的なロールプレイングを行います。ここでの目的は『うまくやること』ではありません。『やってみること』そして『感じてみること』です。失敗を恐れず、新しい自分を発見するプロセスを楽しみましょう。もちろん、ここでの対話は全てシミュレーションであり、お互いのプライバシーと感情を最大限に尊重します。」


Part 1:共感力を高めるリスニング練習

目的: パートナーが勇気を出して打ち明けてくれた悩みや要望を、ただ「聞く(hear)」のではなく、「聴く(listen)」技術を体得する。相手の心に寄り添い、理解を深めるための傾聴スキルを磨きます。

設定: 2人1組になります。一人が「話し手」、もう一人が「聴き手」の役割を担います。(役割は途中で交代します)

【シナリオ設定】

話し手のテーマ: 「最近、セックスの後に、なんだか少し寂しい気持ちになることがあるんだ。あなたに満足してほしくて頑張るんだけど、終わった後、すぐにあなたが眠ってしまうと、私だけ取り残されたような気がして…」

【ロールプレイング開始】

講師:「では、聴き手の皆さん。まずは、やってはいけない**『NGな聴き方』**から実践してみましょう。これは、いかに相手の心を閉ざさせてしまうかを体感するためのものです。」

  • NGな聴き方の例(聴き手役の台詞):
    • ①問題解決型: 「じゃあ、俺が寝なければいいんだろ?次から気をつけるよ。」(→相手の感情を無視し、問題をタスクとして処理している)
    • ②自己弁護型: 「いや、だって俺も疲れてるんだよ。仕事で大変なんだから仕方ないだろ。」(→相手の悩みを自分の問題にすり替え、自己防衛している)
    • ③矮小化・否定型: 「そんなこと気にしてたの?考えすぎじゃないか?」(→相手の感情を「些細なこと」として扱い、否定している)

講師:「はい、ストップ。話し手の皆さん、今、どんな気持ちになりましたか?おそらく、『もうこの話をするのはやめよう』と感じたのではないでしょうか。では次に、『OKな聴き方』、心を繋ぐための傾聴を実践します。」

  • OKな聴き方の技術と台詞例:
    1. ①相槌とうなずき(受容): (相手の目を見ながら、優しくうなずく)「うん…うん、そうなんだね。」
    2. ②感情のオウム返し(共感): 「そっか、終わった後に、寂しい気持ちになることがあるんだね。」(→相手が使った感情の言葉を繰り返すことで、「あなたの気持ちを受け止めていますよ」というメッセージになる)
    3. ③事実の確認と要約(理解): 「僕が眠ってしまうと、君だけが取り残されたような気持ちになる、ということかな?」(→自分が正しく理解できているかを確認する。これにより、話し手は「真剣に聴いてくれている」と感じる)
    4. ④気持ちを尋ねるオープンな質問(探求): 「その『寂しい気持ち』について、もしよかったら、もう少し詳しく教えてもらえる?」(→相手の心にさらに寄り添い、より深い理解へと進む)
    5. ⑤感謝と肯定(尊重): 「そんな風に感じていたんだね。**勇気を出して話してくれて、本当にありがとう。**君の気持ちを知ることができて、嬉しいよ。」(→悩みを打ち明けてくれた行為そのものに感謝を伝える)

講師:「はい、ここまで。話し手の皆さん、いかがでしたか?後者の聴き方をされた時、心が少し温かくなり、『もっと話しても大丈夫だ』という安心感が生まれたのではないでしょうか。これが、共感的なリスニングの力です。」


Part 2:言葉によるフィードバックの実践

目的: 行為の最中に、お互いを傷つけることなく、的確に「快感」を伝え合う技術を練習する。言葉を、二人の快感をナビゲートする「魔法のコンパス」に変えるためのシミュレーションです。

設定: 再び2人1組。「愛撫する側(Giver)」と「愛撫される側(Receiver)」の役割を担います。(これも交代します)

ルール: これは**【言葉だけ】**のシミュレーションです。一切の身体的接触はありません。 全て「今、こうしています」「こう感じています」という言葉で表現します。

【ロールプレイング開始】

講師:「では、Giver役の方から、言葉で愛撫を始めてください。Receiver役の方は、その言葉に集中し、感じたことを正直に、そしてポジティブにフィードバックしてください。」

  • シミュレーションの台詞例:
    • Giver: 「じゃあ始めるね。君の髪を優しく撫でて、耳元にそっとキスをするよ。…どんな感じがする?」
    • Receiver (NG例): 「うーん、普通。」(→これではGiverは何をすればいいか分からない)
    • Receiver (OK例): 「すごく優しい感じで、ドキドキする。そのキス、好きだな。」(→まずは肯定的なフィードバック)
  • Giver: 「よかった。じゃあ今度は、手のひら全体で、君の背中を肩から腰にかけて、ゆっくりと撫で下ろしていくね。オイルマッサージみたいに、ゆーっくりと。」
    • Receiver (NG例): 「あ、もうちょっと強くして。」(→少し命令的に聞こえ、Giverが萎縮する可能性がある)
    • Receiver (OK例 – 魔法のフレーズ活用): 「わぁ、すごくリラックスする…。そのゆっくりな感じ、大好き。もし、もう少しだけ圧をかけてくれたら、もっととろけちゃうかも…」
  • Giver: 「OK。じゃあ、少し体重を乗せるように、圧をかけながら撫でてみるね。これでどうかな?」
    • Receiver: 「うん!最高!まさにそれが欲しかった感じ。すごく気持ちいい、ありがとう。」
  • Giver: 「じゃあ、その気持ちよさが続いている間に、もう片方の手で、君のお腹を優しく、時計回りに撫でてみてもいい?」
    • Receiver: 「うん、お願い。どんな感じになるか、すごく楽しみ…」

講師:「はい、ストップ!皆さん、お疲れ様でした。この言葉のキャッチボールの中で、何が起きていたでしょうか。Giverは、相手の反応を確かめながら、自信を持って次のステップに進めました。Receiverは、自分の快感をGiverに『教育』し、二人で一緒に快感を作り上げていく共同作業ができました。これが、対話型愛撫の醍醐味です。」

本日のワークショップのまとめ

本日の実践で、皆さんは、傾聴が**「信頼」を育み、言葉によるフィードバックが「快感」**を創造する、ということを体感できたはずです。

今日練習したことは、すぐに完璧にできなくても全く問題ありません。大切なのは、**「パートナーの心を理解しようと努める姿勢」「二人の喜びを共に創り上げようとする勇気」**です。その姿勢そのものが、最高の愛情表現なのです。ぜひ、このワークショップでの気づきを、実際のパートナーシップに活かしてみてください。

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